お葬式をする意味 〜なんで人々はお葬式をあげるの?〜
はじめに
そもそも、人々はなぜお葬式をするのか?
不思議に思ったことはありますでしょうか。
どの国でもどの宗教や文化でも、お葬式(またはそれに似た儀式)が存在し、そしてこれまでその文化は絶えることなく続いてきました。
ところがその一方で、近年は多くの葬儀会社から多様な「お葬式の形」が提案されたことで、従来の “人が亡くなる→お葬式” といった固定観念に疑問を持つ方が増えてきました。
しかし、世界中の長い歴史の中で、戦時中などの非常時を除いて葬儀のない時代はありませんでした。
それは、後述する葬儀の持つ役割と、人という生き物が「死を慮る」性質を持つからだと考えられています。
このコラムでは、お葬式の持つ役割と、日本の葬儀の歴史と最近のお葬式事情について簡単にご説明していきます。
もしご興味があれば読んでみてくださいね。
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お葬式の役割
正式に「お葬式」というと、お通夜の翌日の昼間に行われ、お焼香の前の僧侶の読経、引導作法、戒名授与などの宗教的儀式がそれに当たりますが、ここでは、臨終の看とりから納骨までの全体のプロセスのことを指してご説明していこうと思います。
お葬式にはいくつかの役割があると昔から考えられています。
国や宗教によって「死」に対する考え方は、お葬式の持つ役割は多くの国の人々に共通するものがあります。
そしてそれは 宗教的、社会的、精神的、物理的な役割の四つに分けることができますが、このどれが欠けても私たちの大切にする「心のこもったお葬式」は成り立ちません。
◇◇◇文化的、宗教的役割◇◇◇
お葬式は死者、つまり「故人」のために行う儀式です。
さまざまな国や宗教観で “人が死んだら魂や霊が肉体を離れる” と考えられています。
そして、あの世でも故人が安らかに幸せでいられるようにと遺された人たちが祈ったことが、「お葬式」の始まりだと言われています。
宗教によって「供養」「祝福」などと言い方は異なりますが、根底にある「祈り」の気持ちがお葬式には不可欠であり、また、その祈りによって故人はもちろんのこと、遺された人の心の傷も癒えていくのです。
これが1つ目の役割です。
◇◇◇社会的役割◇◇◇
人は、一人では生きていくことができません。
人間は社会的動物であるために、その人それぞれの歴史の中で、たくさんの人々と関わり合いながら生きています。
家族、友人、知人…
お葬式はそういった人々との別れの場であり、その方達のための儀式としての意味も持つのです。
社会に故人の死を報告し確認させることで、遺された人たちは今後の故人のいない社会での身の振り方を考えていけるのです。
また、役所や法律関係などの届出や手続きなどもこの社会的役割に該当します。
◇◇◇精神的、心理的役割◇◇◇
前述したように、お葬式の一連の流れは色々な工程があります。
遺族や遺された人々は、そのプロセスの中で何度も故人の死と向き合うことによって、「死」を実感するのです。
お葬式をせずに直葬で済ました方の中には、後になってその悲しみゆえに精神的に不安定になる人もいます。
お葬式を少し非合理的に思う方もいるかもしれませんが、こういった「死と向き合う時間」を作ることは、大切な人を亡くしたことを受け入れ、悲しみを昇華し、少しずつ普段の生活を取り戻していくために重要なことなのです。
◇◇◇物理的役割◇◇◇
地球上の生物、動物と同様に人間の身体も死ぬと傷んでいきます。
そして少し残酷な言い方ですが、遺体が腐れば病原菌の元にもなります。
そのため、遺体をそのままにしておくことはできず、必ず処理(火葬、埋葬)しなくてはなりません。
火葬までの間は、棺にドライアイスを入れるなどの処置をし、遺体が傷むのを遅らせる対策をします。
その処置やエンバーミング(遺体に行う特別な防腐処理)は、病原菌の繁殖を防ぐと同時に、故人を生前の姿に近い状態にしておくことで、最後のお別れの場をより良く過ごすための役割も担います。
最近のお葬式事情
ここでは、まずこれまでの日本の葬儀の歴史をざっくりと述べた後に、昨今の葬儀のカタチの変化についてご説明します。
昔の人たちはどのようにお葬式をしていたのか、みなさん想像つきますでしょうか?
意外と知られていませんが、戦前までは今のような火葬ではなく、土葬が主流だったのです。
村中の人々が列をなして、村外れの墓地まで棺を運ぶ「野辺おくり」を行って死者を弔っていたのです。
これは戦後すぐくらいまでは全国で行われていました。
土葬の文化は、今の人たちからすれば海外の方の文化のように感じるかもしれませんね。
戦後、火葬が全国に普及していき、墓地に棺を運ぶ必要がなくなり、自宅で全ての儀式をするようになったのです。
終戦直後は、生活を合理化・近代化する「新生活運動」が全国的に盛んになりました。
そのため、昭和20年代から30年代の冠婚葬祭はその特性上の影響を強く受けて香典や香典返し、花輪などが自粛される小規模のものが主流となりました。
しかし、高度経済成長期になるとその考えは衰退し、葬儀は派手になっていきます。
その背景に、この時代から近所付き合いが希薄になり、葬儀社に依頼する人が急増したことが理由にあげられます。
それまでは、隣組(町内会等に属し、近隣数軒が一単位の地域組織)と協力しあい、自宅で葬儀をするのが一般的だったのです。
また、住宅の小規模化の影響で、多くの人は自宅ではなく会館(セレモニーホール)で葬儀を行うようになりました。
そして、特に1970年代からは派手さが増していき、1980年代後半からのバブル景気では祭壇の前に何人もの僧侶が並んだり、家紋入りの灯篭を飾ったりする家庭も珍しくありませんでした。
また、出棺時に白い鳩を飛ばす「放鳥の儀」なども登場しました。
これは現在でも結婚式では珍しい光景ではありませんが、葬儀でと考えると随分と時代の変化を感じますね。
斎場や自宅におくられてくる花輪の数や、弔電が誰から贈られてきたかは参列者の関心事の一つで、また遺族は、有名人や議員、大会社からの弔電や花輪を参列者にアピールしていたのです。
この時代の葬儀などの儀式は、世間体や見栄に重きをおいていました。
しかし、バブル経済崩壊(1994年)以降は再び、葬儀規模は縮小化していきました。
ここまでの全体的な歴史から見れば、葬儀は景気が良ければ大きい、派手な式を上げる人が増加する…
つまり、「冠婚葬祭と景気は連動している」とわかりますね。
しかし、最近ではその傾向が変化しつつあるのです。
景気の良し悪しに関わらず、大人数で派手に行う葬儀から、家族や身内のみの少数人数で行う控えめな葬儀に移行しつつあるのです。
CMなどで耳にしたことのある「家族葬」の定着や、お通夜、葬式、告別式を一日で行う「一日葬」の普及によって、年々、どの地域でも一葬儀に対する参列者の数は減少しています。
こういった葬儀の個人化、縮小化は、2000年以降に注目されてきた超高齢化社会による孤独死の増加が大きく影響しているといわれています。
この、聞き馴染んできた「家族葬」は、今まで「密葬」と呼ばれたものにとても似ているため混同する方も多いのではないでしょうか。
この二つの大きな違いは「本葬」の有無です。
「密葬」では身内や家族などの近親者のみでひっそりと葬儀、火葬を終えて、密葬に参加してもらわなかった多くの人にはその後日を改めて行われる「本葬」に参列頂きます。
これはよく、大きな会社の社長さんや有名人など、参列者の数が多すぎる場合に行われてきました。
しかし、この「家族葬」は本葬はせず、「密葬のみ」の形なのです。
従来、この「密葬のみ」の形はあまり良く思われないものでしたが、「家族葬」と名前を変えたことで悪いイメージが払拭され、急速にそのカタチが普及してきたのです。
その後、「一日葬儀」が登場し、さらに一切の儀礼を排除した「直葬」というスタイルも出てきました。
前述した孤独死と、超高齢化、少子化、非婚化などの要因も合わさり、今後もお葬式の多様化はますます強くなると考えられます。
これまでは祭壇の大きさや規模で故人への弔意を表現していましたが、今までの慣習にそのまま従うのではなく、「故人らしさ」「その人らしさ」を尊重した葬儀にすることで故人への想いを表すようになっていっているようです。
そして、昔はのこされた人々が故人のために葬儀を営んでいたのに対して、葬儀の「事前相談」など、葬儀を “自分のために” 生前から当事者として関わっていく、という新しい概念がここ数年の間に広まっています。
これは、お葬式の文化の長い歴史の中で、大きな変化であると考えられています。
葬儀の多様化は良い面が多く、弊社「ベルホール」でもお客様お一人おひとりが選んでいけるお葬式の提案をさせて頂いています。
人は必ずたくさんの人との関わり合いの中で生きているものです。
ですから、家族親族をはじめ、故人を支えてくれていた多くの人への感謝を示すためにもしっかりと満足のいく選択をなさっていただければと思います。
さいごに
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