忌み言葉とは ーダブーな言葉とその言い換えー
はじめに
忌み言葉とは
【忌み言葉とは】
忌み言葉とは、言葉や言い回しなどで、不吉な出来事を招きかねないとされているもののことを指します。
文化や地域によって異なる場合がありますが、一般的には病気や災害、死や不幸など、不吉なことに関連する言葉が忌み言葉とされています。そのため、その言葉を使わずに代替の言葉を使うなどの習慣があります。
主に冠婚葬祭などの特定の場面では忌み言葉を避けるのがマナーです。
また、信仰する宗教上の理由や職業によってもそれぞれの忌み言葉があります。
お葬式などの弔辞では、不幸が重なることをイメージさせる重ね言葉「度々、またまた、重ね重ね、再び…」などが特に気をつけなくてはいけない忌み言葉になります。
また、忌み言葉は、忌詞や忌み詞と呼ばれることもあります。
【忌み言葉の歴史】
古代日本では、神道的な信仰が根強く、その信仰に基づく忌み言葉が存在していました。
たとえば、「神」や「御霊」などの言葉を口にすることを避け、代わりに「御代」「御魂」「御所」「お方」「かみさま」といった表現を用いることが一般的でした。
また、中世以降は仏教が人々に大きく影響を及ぼし、死というテーマが忌み言葉として定着しました。
たとえば、「死ぬ」といった直接的な言葉を避け、「お亡くなりになる」という表現を用いることが一般的になりました。
近代以降は、西洋文化の影響が強まり、忌み言葉の対象やその由来も多様化しています。たとえば、「4」や「9」といった数字が忌み言葉とされるようになったのは比較的近年のことであり、中国文化から伝わった風習が日本に取り入れられた結果だと考えられています。
忌み言葉は、歴史的・文化的な背景から生まれた言葉や風習が絡み合ってできたものであり、その歴史は複雑で多岐にわたっています。
また、外国に比べて冠婚葬祭の時に使用する言葉に多くの縛りがあるのは「言霊(ことだま)」という考え方が、その風習の元になった一つの理由としてあげられます。
日本では古来より、縁起の良い言葉が幸福を呼び、反対に、縁起の良くない言葉は災いや不幸を呼ぶと考えられてきたためです。
そのため、人生の大きな転換期である冠婚葬祭では、特に忌み言葉を使わないように気をつけ、不幸を連想させない思いやりがマナーとなっていったのです。
何のために気をつけるの?
・ご遺族など残された人々のため
お悔やみの場では、故人が亡くなったこと自体が既に、ご遺族や親しかった方達に悲しみや喪失感を与えています。
そこでさらに忌み言葉を聞くことで、悲しみなど心の負担が増えてしまう可能性があるのです。そのため、故人を偲ぶ気持ちや追悼の気持ちを妨げとならないように、忌み言葉を使用しないことが一般的に求められます。
お葬式は故人を偲び、追悼する場ですので、故人のことを大切に思われていた方々を傷つけることにならないようにしっかりと配慮し、正しい言葉使いをしましょう。
・社会人としての体裁のため
前述したように、人生の大きな転換期である冠婚葬祭では、特に忌み言葉を使わないように気をつけ、不幸を連想させない思いやりがマナーです。どの立場であっても、お悔やみの場にいる方々の心に配慮し、故人とのお別れの場が少しでも慰めになるような雰囲気作りが大切です。
忌み言葉をきちんと知っていることや、場に合わせて言い換えたり、事前に言い回しを考え準備しておくことで、社会人として周りの人たちの信頼を得ることができます。
そのため、参列する際には忌み言葉に気をつけるだけでなく、騒がしい話し声や明るい笑い声は避け、静かに落ち着いた態度をとりましょう。
ご遺族や故人に言葉をかける場面があれば、簡潔で敬虔な言葉を選び、心を込めた言葉を贈るようにしましょう。
その他のお葬式のマナーはこちらをご覧ください。コラム「参列時の基礎マナー」
忌み言葉の種類
忌み言葉となるNGワードを種類別にご紹介します。
・重ね言葉
- 同じ音、言葉が繰り返されるものを重ね言葉といいます。
- 不幸が重なることをイメージさせてしまいます。
- 普段の会話では気にすることなく多用している単語が多いので、忌み言葉の中でも特に注意が必要です。
- (例)重ね重ね、度々、次々、重々、益々、近々、時々、とうとう、いよいよ、だんだん、いろいろ、わざわざ、まだまだ、くれぐれ、日々
・直接的な「生死」の言葉
- (例)死ぬ、死亡、急死、生きていた時、存命中
・死や不幸を連想する言葉
- 重ね言葉と同様に不幸が重なることをイメージさせてしまうものや、死や不幸を連想しやすい言葉は避けましょう。
- (例)さらに、相次いで、枯れる、散る、消える、繰り返し、何度も
・不吉とされる言葉や数字
- (例)苦しい、つらい、浮かばれない、迷う、終わる、切れる、四苦八苦
- ※4や9の数字は出来るだけ避けましょう。
・宗教的な忌み言葉(仏式)
- (例)浮かばれない、迷う、冥福
・宗教的な忌み言葉(神式、キリスト式)
- (例)冥福、成仏、供養、往生
・句読点
- 文章であれば句読点も使用しないように気をつけてください。
- 文章がわかりにくくなってしまう場合はスペースを空けるか、改行しましょう。
・普段の話し言葉
- つい言ってしまうような若者言葉や丁寧ではない言葉遣いは避けましょう。
- (例)超~、めっちゃ、~みたいな、微妙、って感じ、やばい、逆に~
言い換えの例
・重ね言葉
(例)
- 重ね重ね、度々 → よく、深く、加えて、いつも
- 次々 → たくさん、立て続け
- 重々 → 十分、よく
- 益々 → さらに、もっと、一段と
- 近々 → 近いうち、近日中に
- 時々 → たまに、時折
- とうとう、いよいよ → ついに
- だんだん → 少しずつ
- いろいろ → 多様、たくさん
- わざわざ → あえて
- まだまだ → もっと、より
- くれぐれ → 十分に、どうぞ、どうか、よく
- 日々 → 毎日、日常
・直接的な「生死」の言葉
(例)
- 死ぬ、死亡 → 他界、亡くなる、逝去、旅立つ
- 急死 → 急逝、突然のこと
- 生きていた時、存命中 → ご生前、お元気だったとき
・死や不幸を連想する言葉
(例)
- さらに、相次いで → そのうえ、続けざまに、連続して
- 枯れる、散る、消える → 萎れる、衰える、旅立つ、去る
- 繰り返し、何度も → 深く、仕切りに、頻繁に
・不吉とされる言葉や数字
(例)
- 苦しい、つらい → 重荷、耐え難い
- 終わる、切れる → ゴールを迎える、新たな道
- 四(し) → よっつ、4
九(く) → ここのつ、9 - ※また、命日や葬儀などで香典を贈る場合、金額の最後につく数字に「4」を使わないことが多いです。これは「四」という言葉が「死」と同音になるためです。例えば、4,000円ではなく3,000円や5,000円を贈ることが一般的です。
・宗教的な忌み言葉(仏式)
(例)
- 浮かばれない、迷う → うまくいかない、困る、悩む
- ご冥福をお祈りいたします → お悔やみ申し上げます
・宗教的な忌み言葉(神式、キリスト式)
神道ではお葬式は神葬祭といい、死者の御霊を神として祀り、キリスト教では、神のもとに召されるのは喜ばしいことのため、一般的な仏教用語は使用せず、安らかな眠りを祈る表現が好まれます。
(例)
- 冥福、成仏、供養、往生 → ご愁傷様、安らか、平安、旅立ち
まとめ
お悔やみの場では、故人の死を悼み、悲しみに暮れるご遺族の心に寄り添うことが一番大切です。
普段何気なく使っている言葉の中にも忌み言葉はありますので、悲しみに暮れるご遺族や参列者の誰かをうっかり傷つけたり余計な負担をかけたりしないよう、避けるべき言葉、ふさわしい言葉遣いを知っておきましょう。
最近では忌み言葉の使用に敏感な人は減ってきていますが、年配の方の中には重ね言葉をはじめとした忌み言葉を大変嫌う方もいらっしゃいますので、こういったお悔やみの場での使用は避けたり、言い換えたりするに越したことはありません。
このコラムをぜひ参考に、事前の準備をなさってくださいね。
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